
ここ数日、急に気温が下がってきました。
それと時期を同じくして、当院では「数日便が出ない」「便が硬くなった」「お腹が張って苦しい」、さらには「便が出口でつまっている感じがする」「便が出なくてお尻まで痛い」といった、便秘のご相談が増えています。
「寒くなると便秘になりやすい気がする」という方もいらっしゃると思います。
実は、日本の大規模な医療データでも、夏より冬に重い便秘に対する処置が増え、気温が低いほどその件数が多くなる傾向が報告されています。
今回は、急な冷え込みで便通が悪くなったときに、ご自宅でできる対策と受診の目安について解説します。
目次
1.寒くなると便秘は増える?
1-1.日本の大規模データでも冬に増加
2025年、日本全国の医療データを使い、便が直腸にたまって自力で出せない場合などに行われる「摘便」の件数を調べた研究が報告されました。
8年間で約3,200万件を解析したところ、冬は夏より摘便が有意に多く、月平均気温が低いほど摘便件数が増える傾向が認められました。
寒い季節に便秘が悪化するという感覚には、一定の医学的な裏付けがあります。
1-2.寒さだけが原因とは限りません
ただし、「寒さそのものが便秘を起こす」とまでは分かっていません。
寒くなると外出や運動が減る、水分摂取量が少なくなる、食生活が変化するなど、いくつかの要因が重なっている可能性があります。
季節の変わり目は、普段便秘のない方でも一時的に便通が乱れることがあります。
2.便秘になったら自宅でできること

2-1.水分・食事・運動を少し意識する
まずは、
・水分を適度にとる
・朝食を含め、食事のリズムを整える
・普段より少し歩く
・便意があるときは我慢しすぎない
といった基本的なところから見直してみましょう。
ただし、「水をたくさん飲めば治る」「食物繊維を大量にとればよい」というものでもありません。お腹の張りが強い方では、食物繊維を急に増やすとかえって苦しくなる場合もあります。
2-2.お腹まわりを冷やさない
寒い日は、保温インナーやブランケットなどを使って、お腹まわりを冷やさないようにするのもよいでしょう。
入浴で体を温めるのも手軽な方法です。
お腹を温めること自体が便秘を治すと証明されているわけではありませんが、寒い時期に体がこわばったり、お腹の不快感がある方には取り入れやすいセルフケアです。
2-3.「のの字」のお腹マッサージも
お腹をやさしくマッサージする方法もあります。
仰向けになり、おへその周りを「の」の字を描くように、時計回りにゆっくりマッサージしてみてください。強く押す必要はありません。
腹部マッサージについては、排便回数を増やしたり、便秘症状を改善したりする可能性が報告されています。
ただし、強い腹痛や嘔吐がある、お腹が大きく張ってガスも出ない、といった場合にはマッサージをせず、医療機関を受診してください。
3.「便がつまってお尻が痛い」ときは無理をしない
3-1.硬い便が出口にたまることがあります
便秘が強くなると、硬い便が直腸から肛門付近にたまり、
「便が出口でつまって出てこない」
「お尻に便が残っている感じがする」
「便が出なくてお尻が痛い」
と感じることがあります。
無理に強くいきむと肛門に負担がかかり、硬い便によって肛門が切れて痛みや出血を起こすこともあります。
3-2.自宅で浣腸を何度も繰り返すのは注意
市販の浣腸は便秘治療に使われる方法の一つですが、便が出ないからと短時間に何度も使用したり、入りにくい状態で無理に挿入したりすることは避けてください。
「浣腸をしても出ない」「挿入すると強く痛む」「出血した」「便がつまった感じが取れない」という場合には、それ以上自己処置を繰り返さず、医療機関へご相談ください。
4.病院では便秘にどんな治療ができる?
4-1.便秘薬にもいろいろな種類があります
現在は便秘治療薬の選択肢が増えています。
便を軟らかくする薬、腸内への水分分泌を増やす薬、胆汁酸の働きを利用する薬などがあり、便の硬さや排便回数、症状に合わせて使い分けます。
出口付近に便がたまっている場合には、状態に応じて坐剤などを使用することもあります。
4-2.便秘の状態をみて治療を選びます
同じ「3日便が出ていない」という方でも、もともとの排便回数、便の硬さ、お腹の張りなどによって治療は変わります。
便が出口付近にたまっているのか、大腸全体で便の動きが悪くなっているのかを考えながら治療を選ぶことが大切です。
5.急に始まった便秘では大腸の検査が必要なことも
5-1.今までと明らかに便通が変わったら注意
特に次のような場合には、一度原因を確認した方がよいでしょう。
・これまでと比べて明らかに便通が変わった
・血便がある
・便が細くなった状態が続く
・体重が減ってきた
・腹痛やお腹の張りが続く
また、強い腹痛や嘔吐、お腹が大きく張ってガスも出ない場合には、単純な便秘以外の病気も考える必要があるため、早めの受診が必要です。
5-2.必要に応じて大腸カメラも検討
便秘だから全員に大腸カメラが必要というわけではありません。
一方、年齢や症状、便通の変化などから、大腸ポリープや大腸がんを含めた大腸疾患を確認した方がよい場合には、大腸内視鏡検査を検討します。
当院では、便秘の診察から必要に応じて大腸カメラまで対応しています。
6.便秘で困ったら、無理せずにご相談ください
6-1.便秘は胃腸科へ相談を
季節の変わり目には、それまで問題のなかった方でも急に便通が乱れることがあります。
「数日出なくて苦しい」
「便が硬くて出せない」
「便が出口につまって、お尻まで痛い」
「市販薬や浣腸を使っても改善しない」
こうした症状も、胃腸科で診療を行っています。
無理にいきんだり、自己処置をしても改善がない場合には、医療機関へ一度ご相談ください。
6-2.内服・坐剤から大腸カメラまで対応
当院では便秘の状態に応じて、内服薬や坐剤などを使い分けながら治療します。
また、必要な方には大腸内視鏡検査を行い、便通異常の原因となる病気が隠れていないか確認します。
急な冷え込みで便秘になった方、いつもより便が出にくく困っている方は、さいたま市・武蔵浦和の当院までご相談ください。
参考文献
1.Kido M, et al. Seasonal Variations and a Demographic Analysis of Digital Evacuation Incidence for Constipation Management: A Japanese Population-based Cohort Study.Intern Med. 2025.
2.日本消化管学会編.便通異常症診療ガイドライン2023―慢性便秘症.
3.Huang SY, et al. Effectiveness of abdominal massage on chronic constipation in adults: A systematic review and meta-analysis. Int J Nurs Stud. 2025.
4.Koda T, et al. Four Cases of Rectal Injury Caused by Glycerin Enema. 日本大腸肛門病学会雑誌. 2016.
ジェイズ胃腸内視鏡・肛門クリニック
理事長 柴田 淳一
東京大学大学院修了 医学博士
日本消化器内視鏡学会専門医・指導医
日本大腸肛門病学会専門医・指導医
日本消化器病学会専門医
日本消化器外科学会専門医
消化器がん外科治療認定医
浦和医師会胃がん検診読影委員 など
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